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~留学生体験記~

『ベトナムの子供は日本の子供ほど裕福ではないと思いますが、代わりにいつも思う存分、元気いっぱいで楽しい日々を過ごすことができます。』

グェン ティ タィンフォン
(NGUYEN THI THAN PHUONG

第24期在日留学生
 東京国際大学大学院
商学研究科修士課程修了(ベトナム)

私は日本に留学に来て、今年の4月で7年目になります。最初の頃は日本語も上手く話せなかったが、日本での生活習慣、食事、文化など色々と不安と不便を感じながら、以前は知らなかったことだが、新たな発見することを楽しみにしながら生活してきました。

日本での留学生活が長くなると、日本語でのコミュニケーションが出来るようになり、勉強のこと以外にも、日々の生活の中で観察し、不思議に思ったことも 多くなりました。そもそも日本とベトナムは同じアジアでも全く違う国であり、歴史も文化も違っていることは分かっているが、今でも疑問をいだき、ベトナム と比較して最も違うところだと思うのは小学校の教育をめぐる問題です。

ベトナムでは、小学校の入学試験が殆どなく、志願の学校は必ずと言って良い程、確実に入れます。小さい子供たちは入学考査を受けることがなく、入学後も 友達をつくり、集団生活・グループ活動に早く慣れることが主要とされ、基礎的な教育を受けています。しかし、日本では小学校受験熱が高まっています。少し でも良い環境で子供に学ばせたいと願う親の熱意からはじまり、小学校の受験ブームが話題になっています。ペーパーテスト、運動、行動観察などによって子供 に対する考査もあり、親に対する面接まで行なわれています。 従って、日本で小学校の受験のために学習塾や進学予備校などの受験産業が活発なビジネスに なっていることは、最近テレビやマスコミなどでよく見かけ、私はとても驚きます。

少子化社会や学歴社会だから仕方がないという意見もあるが、私は子供たちに小さい時から習いごとに通わせるのは良いことですが、小学校の受験によって辛 い思いをする子供たちが可哀相だと感じます。小学校の6年間は子供たちにとって今後の人生を左右するような大切な出発点ですので、好きなことをやって、た くさんの友達と遊んで、元気に楽しく過ごす時間を多く与えた方が良いと思うからです。子供に友達との競争ばかりをさせ、合否を別にしても、勉強することを 強いて、その子供の気持ちはどうなのか、親は自問したことがないのではと思います。

日本は経済発展がすすんだ国です。日本に生まれ、育った子供たちはそれなりに高度な教育を受けなければならないことは当たり前なことかもしれません。確か に発展途上のベトナムの子供は日本の子供ほど裕福ではないと思いますが、代わりにいつも思う存分、元気いっぱいで楽しい日々を過ごすことができます。私は それで良かったと思います。

機関誌「ふれあい」 No.69号 春季号 (2010.4.25発行)